2012年09月18日

オンラインの議論にはTwitterは適さないというけれど

では、どのようなシステムならいいのかなー、と考えてみる。ダメだというのは簡単だけど、ダメなら自分の頭で代替案を考えてみるのが俺のジャスティス。というのはどうでもよくて、Python-devのMLの1999年当時のstr.join(seq)のスレッド追いかけんのめんどくさいよ(# ゚Д゚) ゴラァというところがスタートなんだけど。

  • オーガナイザーがいる。議論の議事進行役。編集長。
  • 議論への参加にはオーガナイザーの承認がいる。
  • 意見を言う時は次のどれかを選ぶ。
    • 前に出ている意見に対する賛成(いいね的でコメントは不可)
    • 矛盾の指摘(反証が必須)
    • ゆさぶり(その意見ではうまく説明できない箇所・足りない所についての追加説明要求)
    • 議題の追加(オーガナイザーの承認必須)
  • 議論として成り立たないようなコメントがある場合はオーガナイザーが却下することができる(却下の理由とともに却下した事実は残る)

うむー。まるで逆転裁判のようだ。

Open IDとか使えばユーザ管理というか、Twitterの議論から移行してくることは可能だろうし、ある程度Twitter上で行われているお話をオーガナイザーがTogetter的にまとめて、そこを出発点に議論する、というのも手ではあると思う。そして最後に議事録として議論の見える化ができて、PEPドキュメント化されれば完璧。ゆさぶりで出てきた事実は、ゆさぶりの親コメントにマージしてやれば、基本的には反証→反証というきれいな議論の流れになると思う。Twitterの場合は言い逃げもできて良い感じに議論を消滅させるというか、無視するということを使うことで、徹底的な殴り合いをしなくてもいいメカニズムなので、この流れで議論するのは最初からある程度仲がいい人じゃないとダメだろうな、という気はするけど。

誰か作ってくれないかなー

posted by @shibukawa at 23:32 | Comment(25) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - オンラインの議論にはTwitterは適さないというけれど

2012年09月15日

アジャイルの「ア」は合気道の「ア」

Sensei Fujita
taken by denisko under CC BY-NC-SA

今年はサンフランシスコにいて、かつ先月子供が生まれたばかりということもあって、日本にふらっと行ってXP祭り2012に参加することができないので、今年はビデオレターで出演することになりました。僕が考えるアジャイルの核について話をします。ビデオレターって反応がないから難しいですね。なにか間違ったことを言ってしまって(たぶん色々間違っている)も「あ、今間違えました」って気付けない。ビデオレター達人になるにはどうすればいいんでしょうね?手元のNikon D3100+NIKKOR 35mmでFull HDで動画を撮ってみたので、絵は綺麗に撮れたと思いますが、なんか声が小さそうなのでブログにも書きます。XP祭り参加する方はまだ見ないでー!いろいろ補足もしていこうと思います。あと、時間的な制約で2/3ほど内容を削ったので、このブログにはそのあたりも含めます。ぜひ、懇親会でハッスル(死後)した後にお読みください。

日本のアジャイルの黎明期と、アジャイル関連のイベント

僕がアジャイルのコミュニティに関わって10年以上たちました。XP祭りも最初が2003年だったので今年で10回目ですよね。昨年のXP祭りでは10年前のアンケートの結果を紹介しながら話をしましたが、10年前はアジャイル導入は夢の話でした。アンケートを取っても、ユニットテストとリファクタリングだけはやってみた、というレベルの人が多かったように思います。

でも、アジャイルの夢は覚めることなく、時には会社を動かした人がでたり、世界の勉強会に出張で行かせてくれたり、あるいは転職しちゃった、と夢を叶える人もでてきてます。僕も当時は東工大で、その後周りがトヨタトヨタと騒ぎ始めたので、反骨精神が目覚めてホンダに就職し、その後はDeNA、現在は子会社のngmoco:)でなんだかんだでアジャイルっぽい環境に落ち着いています。「ヘイ、ヨシキ!スクラムって知ってるか?」「最初のスクラム本の日本語訳はやったよ」的な会話もキメました。いろんな時差をまたいでいるので教科書通りじゃないですがー。いつかこのあたりの話もしたいですね。

適用が難しいと言われながら、多くのエンジニアを惹きつけて、ゲリラ活動を行わせて世界を変えてしまう。アジャイル原理主義教団は危険だ!今すぐクラス名を記号+数字にして奴らの言論を封じろ!みたいなプレゼンもかつて行われたぐらいです(by牛尾さん)。アジャイルの何が魅力的なんでしょうか?

あと、今日のXP祭りもそうですが、アジャイルのイベントではアジャイルの本に必ずしも書いていない話題もたくさんあります。初期のころのイベントで言うと、マインドマップ、コーチング、パタン・ランゲージ、トヨタ生産方式、振り返り、制約理論、アジャイルUXなんてのも出てきました。パターンそのものはXPの記述には使われていますが、パタン・ランゲージそのものに興味を広げて、沢田マンション(Google日本語入力で補完が出た!)に行っちゃう人も出てきたのはケント・ベックもあずかり知らぬところだと思います。

アジャイルイベントの多様なセッションとアジャイルの共通点

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posted by @shibukawa at 01:35 | Comment(58) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - アジャイルの「ア」は合気道の「ア」

2012年08月13日

子供が産まれました

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もう一週間たってしまいましたが、サン・フランシスコのCalifornia Pacific Medical Centerで長女が産まれました。予定日から一週間近く遅くの出産で、生まれる前から嫁から引きこもり扱いされたりしていましたが、おめめがぱっちりした子が無事産まれました。母子ともに健康です。初産で海外で出産というのはチャレンジングでしたが、いろいろな方のサポートのもと、無事に安心して出産を迎えることができました。うちの母親もこちらまで来てくれました。とても穏やかな子で、お腹すいても、おむつが濡れてもほとんど泣かない子で、授乳の合間は良く寝ています。

ちなみに、結婚のきっかけとなった、ソニックの音楽のディレクターの瀬上純さんとは、一日違いの誕生日となりました。

アメリカでの出産

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posted by @shibukawa at 12:15 | Comment(77) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - 子供が産まれました

2012年07月27日

関わった本が二桁突破しました。

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大学生の時に、当時日本XPユーザグループの代表だった長瀬嘉秀さんに声をかけていただいて翔泳社から出た本に関わって以来、約10年で10冊を突破しました。その間、本田技術研究所に就職して宇都宮に引越したり、DeNAに転職して東京に戻ってきたり、結婚したり、子会社のngmocoに転籍となってサンフランシスコに引越ししたり、とても色々ありました。ここ数カ月はちょっと忙しくて、まともにブログも書けませんでしたが、この数カ月の間にも何冊か本が出版されました。筆が遅くなりましたが、関係者の皆さんに感謝申し上げたいとおもいます。

ちなみに、このエントリーで紹介した以外の書籍は下記の通りです。

  • アート・オブ・コミュニティ ―「貢献したい気持ち」を繋げて成果を導くには
  • ポモドーロ・テクニック入門
  • 電子出版文書フォーマット技術動向調査報告書2010-2011
  • エキスパートPythonプログラミング
  • IT業界を楽しく生き抜くための「つまみぐい勉強法」
  • 実践eXtremeプログラミング
  • アジャイルソフトウェア開発スクラム
  • Xtreme Programmingテスト技法―xUnitではじめる実践XPプログラミング

100人のプロが選んだソフトウェア開発の名著

翔泳社さんの100人のプロが選んだソフトウェア開発の名著 君のために選んだ1冊企画に参加させていただきました。書いた量は全体の1/100です。紹介したのは、C++の設計と進化です。

この本は言語の歴史と、その歴史の過程の中でどのように意思決定がされて、現在の形式になっていったのかが書かれています。書いた内容が2ページなので、概略を書こうとしてしまうと、ブログにも全部書けちゃうので悩ましいのですが、「自分の道具をきちんと知ろう。正確に、詳しく、発展の過程も」といったことが訴えたかったことです。C++と銘打ってありますが、この本で書かれているような過程を、自分の好きな言語についてもなぞってみると、多くのことが学べるとおもいます。

オブジェクト指向JavaScript

技術書の翻訳で有名な水野さんと一緒に、オブジェクト指向JavaScriptの翻訳をしました。直球なタイトルどおりの内容です。原著が少し古く、ECMA Script 5ではなく3対応だったりしますが、3と5で変わるようなチャラい内容ではなく、JavaScriptの基本骨格を丁寧に紹介した本です。

JavaScript関連はブラウザ、サーバ、クライアントとさまざまな分野に広がりつつありますし、必要な知識やコードの構成は土台によってもいろいろ設計が変わってきます。最大公約数的なコアの知識を本書で得ながら、それぞれ自分が特化したい分野に関しては、ウェブサイトや技術評論社の雑誌などで最新情報をおっかける、みたいな読み方が良いと思います。HTML5だBackbone.jsだnode.jsだMeteorだ、といったキラキラした技術に触る際に、ぜひご一緒にどうぞ。「JavaScriptのDISりなら俺に任せろバリバリ〜」という発言とHTML 5で有名な、紀平さんも下記のように紹介してくれています。

Mobageを支える技術 ~ソーシャルゲームの舞台裏~

DeNAのメンバーとして、Mobageを支える技術 ~ソーシャルゲームの舞台裏~ (WEB+DB PRESS plus)の執筆に参加しました。

どちらかというと、Mobageに(生活を)支えてもらっている技術な今日この頃ですが、本書の4章のngCore関連の章を書きました。ngCore関連はこの本が出てからの数カ月でもいろいろバージョンアップし、GUIの統合開発環境のngCore Builderを使ってソースコードデバッグができるようになったり(ないしょだけど、node.jsのV8エンジンのデバッグもできるらしいですよ)、様々な統計情報がリアルタイムにグラフで見られるようになったり、エンジンも高速化されたり、動画再生が追加されたり、高速なパーティクルエンジンが入ったりと機能追加がされていたりもします。そんなどんどん良くなっていく最中のスナップショット的な感じの章になっています。

また、データベースの章なども充実な内容になっており、発売後に社内のSNSで「えー、こんなことまで書いてしまって・・・」みたいな声が上がるほどなのですごいと思います(僕は専門じゃないので他と比較とかはできないですが)。みんなで勢い良く書いた内容です。楽しんでいただければ幸いです。

posted by @shibukawa at 05:51 | Comment(89) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - 関わった本が二桁突破しました。

2012年05月09日

Win/Mac/Linuxで圧縮テクスチャを作成する

圧縮テクスチャ。現代的なグラフィックス処理の大半はメモリ間転送ですよね。圧縮テクスチャはGPU内のメモリ使用量と転送量を削減してパフォーマンスもアップさせる魅惑のテクニックです。きっとスマートフォンのバッテリーの持ちも良くなることでしょう。

iOSはPowerVRを一貫して使っているので、PVRフォーマットが標準です。Androidの方はいちおうETC1という共通フォーマットはあるのですが、アルファチャンネルが持てなかったりするのでデバイスごとの最適なフォーマットを使うのが普通みたいです。

  • ATiTC: 元ATi(現AMD)のフォーマット。ATCとも呼ばれています。ATiのモバイル向けのプロセッサは現在Qualcommがリリースしています。よく使われていrます。アルファチャンネルの有無、アルファチャンネルの特性で3種類の内部フォーマットがあります。
  • DXTC: Direct X用共通フォーマットみたいです。nVidiaのTegra系が利用しています。これも、データの種類ごとに3〜4種類の内部フォーマットがあるらしい。
  • PVR: iOS系と同じPowerVRを載せているデバイスで使います。圧縮率、アルファチャンネルの有無で2x2の4種類あります。
  • ETC1: エリクソン社が作った標準フォーマットですが、ARM社自身が作っているMaliというGPUがこれのみをサポートしています。

そのうち、ETC2というアルファチャンネルをサポートしたフォーマットが共通で使えるようになるらしいです。このあたりは、こちらのブログを上から下まで拝むように読みまくる方が正しい情報を得られると思います。

開発ツールのみであれば、WindowsかMacだけでもいいとは思うのですが、ビルドサーバとか考えるとLinuxサポートも欲しくなるかもしれないので、その観点でマルチプラットフォームで入手可能か?で調べています。全部の検証をしたわけではないです。あくまでもメモです。

PVRフォーマット

PowerVRをリリースしている、Imagination社のサイトにツールなりなんなりが色々あります。要ユーザ登録。PVRTexToolが変換ツールです。GUIツールですが、コマンドラインからも使えるらしい。パッケージに、Windows 32/64, Linux 32/64, Mac 32の5バージョンが含まれています。Windows版だけはDXTCサポートみたい。ずるい。Apple限定でよければ、iOS用のSDKに変換ツールが付いてきます。

ライブラリとしても提供されていますので、ツールチェーンに組み込んだりもしやすいかな、と思います。ただし、ビルド手順を見ると、SDKに含まれるライブラリとかヘッダも必要とか色々書かれていて、家の遅いネットでダウンロードするのが時間がかかりそうなので詳しくおいかけてません。SDKはOpen GL ES1.1と、ES 2.0用と分かれていリリースされています。

DXTCフォーマット

今回は僕の作業では特に必要はないので詳しくは調べていませんが、nVidia社が変換ツールのソースをMIT License!で公開しています。コメントを見ると、Linuxでも動くよ、と書かれています。Macは時々落ちるかも・・・と書かれています・・・。

http://code.google.com/p/nvidia-texture-tools/

ATiTC/ETCフォーマット

なかなか調べにくかったのがこいつです。DXTCファイルから無理やり変換も見つけましたが、1ビット情報を無理やり落としてしまっていたりとちょっとデザイナーさんから怒られそうな感じ。AMDはWindows向けのツールしか提供していませんし、QualcommのAdrenoSDKもzipファイルを展開すると.exeファイルががががが。

でも、あきらめずに.exeファイルでインストールすると、変換用のライブラリが手に入ります。Windows32/64用とMac用。それにWindowsMobile、webOS、Androidもサポートしているので実機上の変換もできそうです。Linuxは残念ながら対象外。

また、Windows専用ですが、QCompressというGUI/CUIのツールも付いてきます。@nakamura001の啓示に従い、wineで動かしてみようと思います。

$ sudo port install wine
: (待つ)
$ wine ~/Downloads/AdrenoSDK/AdrenoSDK.2.3.00.exe

ふつーにWindowsっぽいダイアログが出て、インストールが行われます。初回のwine起動時は環境作ったりで時間がかかるかも。ホームの.wine以下にWindowsっぽいディレクトリ構造ができます。/users/Public/Documents/にテスト用の画像を置いてみました。

$ cd ~/.wine/drive_c/AdrenoSDK/Tools/QCompress
$ wine QCompressCmd.exe c:\\users\\Public\\Documents\\test.png c:\\users\\Public\\Documents\\test.atc "ATC RGBA Explicit"
QCompessCmd v0.01.00 (c)2011 QUALCOMM Incorporated

フォルダを見てみると、test.atcが出来ています。やったね。

上記の例で使ったQCompressがETC1にも対応しています。以上終了。

まとめ

やっぱり、Windowsの方が細かいツール類は充実していますねー。一部無理やりなところもありましたが、ひと通り欲しいデータは得られそうです。

posted by @shibukawa at 03:42 | Comment(254) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - Win/Mac/Linuxで圧縮テクスチャを作成する

2012年04月02日

Pythonプロフェッショナルプログラミング

DSC_0937

レビューにちょびっと参加した、Pythonプロフェッショナルプログラミングが無事発売されたようです。おめでとうございます!わざわざ、アメリカにまで献本を送って頂きました。ありがとうございます。ホントにアメリカなんだぜ、というのを証明するために、USのトイザらス限定のクラシック・ソニック10インチフィギュアと、日本未発売のアニメーターズ・コレクションのポカホンタス、サン・フランシスコのローカルなアイスのThree Twinsと一緒に写真撮ってみました。

Amazonでも入荷待ちになっていますね。Amazonで買えないときは、弊社の親会社(DeNA)が運営するビッダーズで検索すると、見つかるかもしれませんよ。ポイントも付くかも?

本のタイトル的にはエキスパートPythonプログラミング とかぶっていますし、いくつか同じテーマを扱った章もあります。ですが、こちらはより実践的な、仕事で使えるような内容がより多くなっています。テーマが同じでも、より深堀してあったり(Sphinxのドキュメント)、より新しい内容を元に書かれていたり(パッケージ管理)、最近ではより広く使われているもの(Jenkins)を対象としていたり、エキスパートPythonプログラミングを持っている人でも、「おおっ」っと思える内容が多いです。まぁ、エキスパートPythonプログラミングの方は、Pythonという言語を深く深く取り扱っている本なので、当然両方そろえるべきですね【ステマ】

とくに実践的だな、と思えるのが想定環境です。最近のシステム開発だとウェブ上のシステムがかなりの割合を占めていると思いますが、仮想PCを使って、それの上で開発をすると説明されています。もしかしたら他のRailsとかの本もそうなっているのかもしれませんが(最近全然そちらは追いかけていない)、個人的には「なるほどー」と思いました。以前、大規模にPythonで開発していたときは、Windows XP上でコードを書き、Djangoで動作確認をしながら、本番環境(Windows Server 2003)にデプロイして・・・とかやっていました。細かい差であっても、結構デプロイ作業で手間暇がかかったりするんですよね。また、開発環境をシステム上に入れてしまうと、Pythonのバージョンなどで引きずられてしまったり・・・と。当時のPCは非力すぎて仮想PCは難しかったという事情もあったのですが、いろんな仕事を受託で引き受けて、ばっちり開発しているようなBeProudでは、そのあたりはしっかりとしているんだなぁ、と思いました。

かなりスキルの高い開発者を固めている印象のあるBeProudの、実践でつちかってきたノウハウがばっちり書かれた本に仕上がっています。Pythonと書かれていますが、半分ぐらいの章はPythonでなくても役に立つ話が書かれています。とても良い本です。ぜひ、みなさんお手にとって、レジまで運んでお金を払い、東京で毎月定期的に開催されているBPStudyという勉強会にも参加して、できるエンジニアの人たちのありがたいお話を聴きながら、本にサインをもらうと良いと思います。

posted by @shibukawa at 16:59 | Comment(210) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - Pythonプロフェッショナルプログラミング

2012年03月29日

MacPortsは生まれ変わった

Golden Gate in San Francisco, California
by www.frontendeveloper.com under CC BY-SA

あ、近況報告ですが、DeNAから子会社のngmocoに転籍となり、サン・フランシスコに引越しました。また暇見つけて詳しく書きます。

MacのOSS関連のツールのインストールは昔からいろいろ歴史があります。最近の事件としては、MacPortsがほぼデファクトだったときに、Homebrewが出てきて一躍人気になり、MacPortsからの引越しネタが一時期の技術ブログでさかんに書かれたことですかね。

で、僕もいろいろ使っていました。最近は、環境を作りなおす際に時間節約と思ってHomebrewを使っていたのですが、どうしてもBoostの最新版がインストールできず(手元のフォーミュラがupdateでも更新されず、手元のフォーミュラの参照しているアーカイブはすでにsourceforge上から削除)、困ってMacPortsに戻しました。そしたらびっくり!ビルド済みのバイナリパッケージを落としてくるようになってました。

依存関係がやたら多い(X11とかも含む)py27-pilをインストールしても、7分半(fontconfigのactivateに時間かかってた)。今までのように、ビルドをしかけてから、オヤスミなさいまた明日する必要はないです。あ、僕のマシンはHDDのCore 2世代のMacBook Proです。ディスク暗号化とかいろいろかかっていてかなり重いです。Windows 95を思い出すぐらい・・・

インストールの過程を見ても、必要なパッケージはだいたい自分のサイトのところに置いていて、サードパーティのサイトのリンク切れとかに悩まされられない安心感もいいですね。ビルドしないからSSDみたいな環境の人にいいと思います。スペースが余計に使われないので。また、ビルドしないので、HDDみたいな環境の人にいいと思います。ビルドの時間がかかりませんし。なにより、CPUパワーと時間が食われて熱となって消えていくわけですから、バイナリを使ったほうがエコですよね。gentoo好きみたいなビルド好き以外の人はMacPortsを選んでおけば間違いないと思います。作業のインフラとしては。

まぁ、比較してみると、ちょっとパッケージに収録されているバージョンが古かったり(node.jsは0.6.10。Homebrewは0.6.14)、というのはありますが、gitとか、安定している仕事のツールを揃えるにはいいんじゃないでしょうか?

今、Boostを+universalでインストールしていますが、基本バイナリで、見つからないやつだけソースコードからビルドしている模様。icuのuniversalバイナリはなかったか・・・でも、icuのソースはmacports.orgから取ってきていました。Boostのソースはsourceforgeでしたけど。

Homebrewさん、お世話になりました。

posted by @shibukawa at 05:54 | Comment(185) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - MacPortsは生まれ変わった

2012年02月18日

Sphinxへの感謝の気持ちをブログに書いてみる

sphinx02

僕はSphinx-Users.jpの創設者です。そんでもって、Sphinx-Users.jpの会長をやっていました。先月、次の代表に譲ったので今は違います。現在の会長は@tk0miyaさんです。通称、世界の小宮。副会長は前期からの引き続いて@shimizukawaさんと、新規の@shkumagaiさんです。できる人ほど忙しい、という法則の通り、みんな暇ではないのですが、きちんとビジョンを持った、良いメンバーだと思います。

僕が代表を辞した理由は、転勤によるものです。今はベイスターズで有名な東京のDeNAで働いています。実は野球以外にソーシャルゲームをやっている会社でして、僕もそちらの仕事をしています。来月から、アメリカの子会社のngmoco:)に転勤になります。サンフランシスコです。日本でのコミュニティのマネジメントはできなくなってしまいます。ただ、大きな成長のチャンスを与えてくれたDeNAにはとても感謝しています。

Sphinx-Users.jpは変わったソフトウェアのコミュニティで、Sphinxと、一般的なドキュメンテーションを対象にしています。コミュニティのミッションは、Sphinxやドキュメンテーションに関する情報を集約し、発信していくことです。僕がSphinxに出会ったのは2009年。僕は大学のころから、SWIGやらC++のリファレンスやら、アジャイルソフトウェア開発スクラムやら、実践eXtremeプログラミングやらの翻訳をしたりしていました。Erlang Efficiency Guideというドキュメントを翻訳しているときに、@Voluntasというとんでもない男にSphinxを教えてもらいました。どうとんでもないかというと、自分が読みたい英語の文章があったら、他の人に興味を持たせて、そいつに翻訳させてしまうという・・・ある意味人使いのうまい奴です。日本のPython界とErlang界を影で操っているのはこの男です。某トイプー使いのトイプーさばきとどちらが上か気になります。そんなこんなでSphinxに興味を持ち、リファレンスのドキュメントを日本語に翻訳したりしました。その後Sphinxのコミュニティを作りました。コミュニティの最初のイベントは単なる飲み会だったのですが、偶然その日にSphinx 1.0がリリースされて、偶然リリースパーティー(世界で唯一)になってしまったのは良い思い出です。その後、Sphinxは僕の右腕として大活躍しました。本を5冊ほどSphinxで書きましたし(別の2冊が進行中)、仕事のドキュメントも書きました。僕の持つスキルの中でもかなりの重要度です。

sphinx01

コミュニティイベントには、かなり熱心な人が多く集まりました。PHPのコミュニティのメンバーもいました。@tk0miyaさんもそのようなアクティブなメンバーの一人です。Pythonの勉強がてら、Blockdiagシリーズを次々と作っては公開しました。去年の11月にはsphinxjp.shibukawaという名前で誕生日プレゼントのモジュールを作ってプレゼントしてくれました。おかげで今週、DeNAの同僚から不具合の報告を受けることになったのですが・・・他のメンバーも同様です。@shimizukawaさんはSE向けのドキュメントテンプレートを作成したり、HTMLのテーマを簡単にインストールする拡張を公開したり、Windowsのインストーラも作成しています。@shkumagaiさんは、なかなか刺激的なプレゼンテーションのテーマを作っていたりします。他のメンバーもいろいろな貢献がありました。全部おぼえきらないほどです。日本からの貢献をまとめて紹介するページをコミュニティページに足さなかったのは失敗でした。

Sphinx-Users.jpはすでにコラボレーションの仕組みを持っています。ウェブサイトのリポジトリに誰かがpushすると(もちろんソースはSphinx)、裏でサーバがpullして自動でビルドします。さくらの廉価な月500円プランなので、Jenkinsとかを使うことはできませんでしたので、cronを使って実装しています。オフラインの勉強会に参加できなくても、外からコミットはできます。新しいリーダーは多くのイベントを開催してくれそうです。ソフトウェア開発の速度がドキュメンテーションやコミュニケーションの速度を超えるまでは、ドキュメンテーションは重要なもので在り続けるでしょう。PythonやErlangなどのようなすばらしいシステムはすばらしいドキュメントを持っています。そういう意味で、Sphinxのスキルは、プログラマにとっての良い習慣になっていくでしょう。Sphinx-Users.jpの今後の発展を期待しています。

そうそう、Sphinx-Users.jpにはひとつ迷信があります。僕も@shimzukawaさんも、Sphinx-Users.jpの三役をしている時に、相手を見つけて結婚しました。@tk0miyaさんは、会長に就任して1ヶ月もたたずに、彼女ゲッツ宣言を出していました。Sphinxに関わる人は幸せになっちゃいますね!

posted by @shibukawa at 03:40 | Comment(294) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - Sphinxへの感謝の気持ちをブログに書いてみる

Thank you for Sphinx!!

sphinx02

I am a founder of Sphinx-Users.jp. And I was a leader of Sphinx-Users.jp. Generational change was done last month. Now the leader of community is @tk0miya (his byname is "World Komiya"). Sub leaders are @shimizukawa (he continued) and @shkumagai. Basically they are all busy but they have clear vision and great members.

The reason of I have to resign the leader is job transfer to a affiliated company. I am working at DeNA Co.,Ltd, Tokyo, Japan. It is a social game company. And I will move to ngmoco:) LLC it is in San Francisco, USA. I won't be able to manage community in Japan. I would like to say thank you to DeNA for giving me chance to grow up. I am exciting.

Sphinx-Users.jp is a unique community. It deals not only Sphinx but also generic documentation topic. Its mission is gather and spread information about Sphinx and documentation. I met Sphinx in 2009. From my courage days, I translated many documents. SWIG, C++ reference, Agile Software Development with Scrum, Practical Guide to eXtreme Programming and so on. During translating Erlang Efficiency Guide, blamed guy @Voluntas taught Sphinx to me. If he found any interesting topic in English, he made other guys translate in Japanese. He is the rule of Python and Erlang in Japan. I was interested in Sphinx and I translated the reference document into Japanese. After that, I made a community about Sphinx. First event of that community was just drinking party. But Sphinx 1.0 was released at the same day, so it became release party by chance. It was a good memory. After that, I wrote many document on Sphinx. It includes 5 published books (and 2 are under writing) and business work. Now Sphinx is an one of most important my skill.

Many good members came to the community event. It includes PHP community members. @tk0miya is one of them. He start creating Sphinx extension, Blockdiag series with learning Python. L ast November, he gave me special birthday present. It was sphinxjp.shibukawa, it has my name in it. So I reported the bug of that extension this week from my coworker... Other guys too. @shimizukawa uses Sphinx in his work and opened his document template for software consulting. And he created HTML template extension and Sphinx installer for Windows. @shkumagai created super impressive presentation theme. I can't remember all community member's commitment. I should have created show case page in Sphinx-Users.jp website.

Sphinx-Users.jp already made collaboration system. If I commit to the website's repository(of course it uses Sphinx too!), hosting server pulls and build automatically. My cheap host server ($5/month, no transfer fee) doesn't use cool daemon system like Jenkins, so it is based on cron... super simple. So I can't attend offline event anymore, but I can commit from USA. And new leaders will hold many offline events. Documentation have been important until programming speed will overtake documentation(communication) speed. Good software have good document. Like Python and Erlang.The skill of Sphinx is good habit for all programmers. I am crossing my finger for continue growth of Sphinx-Users.jp.

Oh, I forget one more thing. I have to tell the rumor of Sphinx-Users.jp. When I and @shimizukawa were leader of Sphinx-Users.jp, we found partners and god married. And @tk0miya got girl friend within a month from becoming the leader. Sphinx gives us happy :)

sphinx01
posted by @shibukawa at 03:11 | Comment(298) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - Thank you for Sphinx!!

2011年12月24日

RPythonでスレッド-RPythonで何ができるかを知るには?-

Christmas Blooms in Singapore
by chooyutshing under CC BY-NC-SA

さて、クリスマス・イブになりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか?昨日のソニック・ジェネレーションズのイベントで、ハードロックアレンジのクリスマスソングを聞くまではクリスマスイブのことなどすっかり忘れていました。

今日はまさかの三週目のPyPy アドベントカレンダーのエントリーを書いています。

RPythonでスレッドを使ってみる

Pythonとほぼ互換のPyPyでは当然のスレッドをサポートしています。PyPyはRPythonで書かれていてtranslate.pyでビルドされています。つまり、RPythonで作る実行ファイル用のスレッドサポートがpypyのコードのどこかにあるはずです。ためしにgrep -r "thread" *としてみると・・・いろいろわんさか引っかかりますね。その中でも、pypy/module/thread/以下のモジュールがあやしそうです。

pypy/module以下のフォルダは、RPythonで処理されたり初期化されたりして、最終的にPyPyの組み込みライブラリとして使われるモジュール群になります。thread以外にも、bz2zipなどのファイルアーカイブ関連とか、_multiprocessingpyexpatなどもこの中にあります。

オブジェクトスペース

さて、この中のモジュールをそのままコピーすればいいのかというとそうではありません。@jbkingさんのアドベントカレンダーのエントリーで説明されている通り、RPythonにはオブジェクトスペースという概念があります。言語の基本的な論理構造をインタフェースとして切り出したものです。こちらにオブジェクトスペースで提供しているインタフェースの数々があります。

たとえば、is_trueを書き換えると、Rubyみたいに0を真として扱うような言語が作れますし、演算子を書き換えると、PerlやAWKのように、適当に文字列表現の数値を変換してから計算するような言語が作れるといった寸法です。callを書き換えて遅延評価やmemoizeを実装することも可能かもしれません。

pypy/module/以下のライブラリは、このオブジェクトスペースが整備された、言語処理系のためのライブラリとして実装されています。pypy/module/thread/__init__.pyを見ると、pypy/module/thread/os_thread.pyからstart_new_thread関数をインポートしていますが、こちらのコードを見ると、最初の引数にspaceとあります。

我々にはオブジェクトスペースなど不要!

ですが、RPythonを言語を作るためではなく、マゾっ子志向プログラミング言語(MOPL)として、あくまでも、ふつうのプログラムを作るための処理系として使う場合には、オブジェクトスペースを1から作るのは大げさです。そのため、このPyPy向けのモジュールを参考にしながら、実装していく必要があります。

逆に言語を作りたい人は、このあたりから勉強していくといいのかもしれません。基本的には、パーサを作って、オブジェクトスペースを操作するための命令列を作る、というのがRPython Toolchainを使った言語作りです(僕の理解では)。

さて、os_thread.pyを見ると、ll_thread.pyの関数を呼び出しています。ざっとこの2つのモジュールをコードリーディングしてみると、つぎのようなことが分かりました。

  • ll_thread.start_new_thread()を使えばスレッドが作れる。
  • ll_thread.start_new_thread()にはパラメータを渡せない・・・
  • os_threadでは、グローバル変数?を使ってパラメータ渡しをエミュレートしている。
  • os_threadではパラメータ渡しでトラブルが置きないように、スレッド起動時にロックをかけている。
  • スレッドの最初ではll_thread.gc_thread_prepare()を呼ぶ必要がある

このように、コードリーディングした結果を手で実装してみて、確認していきます。

スレッドをためしてみた

できあがったのが上記のコードです。グローバル変数の読み書きのタイミングよりは、list.pop()の方がちょっとは安全かな?(要出展)ということで、スレッド分パラメータをあらかじめ作っておいてpop()していますが、まぁこれは実験コードですので、本番コードを作る場合にはPyPyの実装と同じく、ロックを使う実装にすべきです。スレッドごとに指定された時間分スリープしながら(重い仕事をしているイメージ)、終わったら、自分のIDをコンソールに出力しています。translateで実行ファイルを作ってみて、実行するとつぎのように表示されます。

$ ./testthread-c 
finish task:1
finish task:2
finish task:1
finish task:3
finish task:1
finish task:4
finish task:2
finish task:1
finish task:5
finish task:1
finish task:3
finish task:2
finish task:1
finish task:1
finish task:4
finish task:2
finish task:1
finish task:3
finish task:1
finish task:5

どうやらきちんと実行できているようですね。ちなみに、translate.pyには--threadオプションがあるのですが、付けても付けなくても、普通に動きました。

まとめ

スレッドを題材に使いましたが、説明したかったのはつぎのようなことです。

  • RPythonでできることを調べるなら、PyPyのコードが参考になる
  • 言語を作らないなら、オブジェクトスペースに依存した部分を取り払って使う必要がある

それでは最後になりました。つぎは@drillbitさん?

posted by @shibukawa at 16:33 | Comment(213) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - RPythonでスレッド-RPythonで何ができるかを知るには?-

2011年12月21日

RPythonを使ってechoサーバを作る

Echo Rock and Observation Rock
taken by brewbooks under CC BY-SA

PyPy Advent Calenderの第二回目のバトンが回って来ました。こんかいは時間がないので、さらっと。

RPython用のライブラリ、rlibを探る冒険その2

rlibを探検してみるエントリーの第二弾です。アドベントカレンダーの中では、shomah4aさんがclibffiというモジュールを使って、Cで書かれたライブラリの関数を呼び出していました。

初めての方もいるかもしれないので、軽く関連情報をおさらいしてみましょう

  • PyPyは、Pythonで書かれたPythonインタプリタである。
  • Pythonで書かれたといっても、CPythonの上で実行されるわけではなく、RPython Toolchainというツールを使ってCやllvm、Java、.netに翻訳されてバイナリが作られる。
  • このバイナリを作る用に機能を制限したPythonがRPythonである。
  • RPythonで書かれたプログラムはtranslate.pyで変換するか、Python上で実行できる
  • RPythonでCに変換すると、40倍ぐらい早くなっちゃったりする。
  • RPythonの制約はかなり厳しく、マゾっ子指向プログラミング言語(MOPL)である。

詳しくは、アドベントカレンダーの他のエントリーも見ると良いと思います。

rlibには何が含まれるの?

rlibについては、PyPyのドキュメントが参考になります。名前から何をやっているのか分かるものもあれば、わかりにくものもあります。僕もまだすべて試したわけではないので・・・ちなみに、pypy/pypy/rlib以下にあるモジュールを不用意にimportすると、ビルドできないモジュールもありますので要注意。何がどうなっているのかよく分からないのですが・・・

  • listsort
  • nonconst
  • objectmodel
  • rarithmetic
  • rbigint
  • rrandom
  • rsocket
  • streamio
  • unroll
  • parsing

RSocketを使ってみる

今回はrlibの中から、rsocketを使って、echoサーバをつくってみようと思います。

はい、できました(3分クッキングの音楽を妄想で補完してください)。

Pythonのsocketの違い

大きな処理の流れに関しては違いはありません。

  • gethostbyname()の返り値がrsocket.INETAddress型。
  • RSocket.bind()rsocket.INETAddress型を受け付ける。CPythonのようにタプルは受け取ってくれない。
  • gethostbyname()呼び出し時は一度にrsocket.INETAddressのオブジェクトに一度にポート番号とIPアドレスを指定できない

あと、細かいPyPyの問題として、while True:とエラーになったので、十分に大きなループにしてあります。

遊んでみる

遊んでみました。起動するとポート5000で立ち上がるので、Telnetでつないで入力すると、入力した文字が返ってきます。

$ telnet localhost 5000 Trying 127.0.0.1... Connected to localhost. Escape character is '^]'. server : connection start hello world hello world

こちらがサーバ側のログです。地味ですね。すみません。

$ ./server_rsocket-c waiting for connection... connection start 'cv: 'hello world

本当は、こちらのベンチマークを図ろうと思ったのですが、何やらエラーになるので、測ってません。

CPythonと互換性がないのは、ちょっと使いにくいな、と思うので、CPythonとなるべく同じインタフェースになるようにしたライブラリでも作りたいなぁ、と思います。今回はthreadモジュールに関しても色々トライしていたのですが、まだばっちりと動くところまでできなかったので、今回はsocketだけです。

次は誰かな?

posted by @shibukawa at 01:39 | Comment(215) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - RPythonを使ってechoサーバを作る

2011年12月10日

PyPyよりも5倍高速な最速のPython処理系

IMG_0844

今出張で、サン・フランシスコに来ています。街はもうクリスマスムードで、楽しげな雰囲気がただよっています。期間限定のアイススケートのリンクが公園にできていたり、ngmoco:)のオフィスの入っているビルにもイルミネーションが飾られていたりします。

PyPy advent calendar に参加しています。@aodagからバトンを受け取りました。今日のこのネタはアドベントカレンダーの記事です。

PyPyはご存知でしょうか?その怪しげな(Pythonらしくイヤラシい)名前にもかかわらず、なんだかよく分からないパフォーマンスを叩き出しているPython処理系です。1.6でもすでにCPythonよりも早かったのですが、1.7ではさらに改善されています。

ですが、このPyPyよりも速いPythonの処理系が存在します。次のスクリーンショットはフィボナッチ数列を計算するベンチマークプログラムの結果です。それぞれの組みの最初の行が計算結果(F31)で、2行目が経過時間です。このベンチマークでは、比較対象としてCPython 2.7.2とPyPy 1.7を使っています。

スクリーンショット(2011-12-10 19.23.38)

PyPyはCPythonよりも8.6倍ほど高速であることが分かりますが、「それ」はPyPyよりも5倍ほど高速でした。オリジナルのCPythonと比べると、実に40倍の速度です。にわかには信じがたい結果です。

この秘密のPythonはPyPyに含まれています。Restricted Pythonというもので、略してRPythonと呼ばれます。Zopeには同じ名前のPython環境がありますが、これとは異なります。ベンチマークのコードを以下に貼り付けます。このブログではsmippleを利用しました。Ianさんありがとう!

だけど、そんなインタプリタ存在しないよ

ですが、RPythonインタプリタなどというものはどこを探してもありません。RPythonというのは、Pythonのサブセットの仕様名です。すべてのRPythonのプログラムはPythonやPyPy上で実行させることもできます。PyPyでは、もう一つ、translate.pyというツールを提供しています。このブログのキモはこのプログラムです。translate.pyについて紹介します。

RPythonってなに?

RPythonはPyPyのために作られたサブセットです。PyPyがPythonで書かれている、という話を聞いたことがある人もいるでしょう。ですが、PyPyのとんでもない速度はGuidoが開発しているCPython上で達成された結果ではありません。Pythonで書かれたPyPyのインタプリタのソースコードはtranslate.pyを使ってC言語やLLVM、CLR(.net)、Javaといったバックエンドのソースコードに変換されます。RPythonは軽量言語的な柔軟性を捨てる代わりに、速度を獲得した言語といえます。例えるなら乙女座のシャカですね。RPythonの結果はまさに天舞宝輪です。

py2exeなどのように、このネイティブコードやJavaや.netなどのプログラムを生成できるというところに興味があったので、アドベントカレンダーのネタ作りのためにちょっと触って見ました。

RPythonでコードを書くにはどうするの?

つぎのコードは、すべてのプログラマーにとって馴染みの深いコードサンプルのHello Worldです。

  • target関数は、エントリーポイントを定義する特別な関数。
  • __name__を使ったブロックはRPythonでは実行されないため、他のPythonインタプリタと互換性を維持するのに使える。
  • エントリーポイントの関数は整数を返す必要がある。

つぎのコマンドを実行して、スタバにでも行ってコーヒーを飲んでいると、凄まじく効率の良いバイナリのプログラムが生成されます。

僕はまだ詳しくは調べていませんが、RPythonには速度に関するオプションがたくさんあります。Just-In-Timeコンパイラだったり、ガーベジコレクションのアルゴリズムを選択s地ありできます。上記のベンチマークの結果は単に-O2をつけただけで簡単に実行したものです。また、上記のコマンドラインではCPythonを使っていますが、PyPyを使うと、ちょっと時間の節約ができます。

RPythonプログラミングはエクストリーム・プログラミング

この「エクストリーム」は「エクストリーム・アイロン」的な意味ですお察しください。ほとんどのPythonのコードはそのままでは変換できないでしょう。なんだかC++でコードを書いているかのような気分になりますし、多くの落とし穴があります。ここでは解決方法がわかっているものに限定していくつか紹介します。

関数の中で他の関数を定義

関数定義をネストさせることはできません

多重継承

RPythonは多重継承をサポートしていません。メソッドのコードの共有をしたい場合には、_mixin_フラグを2つ目以降のクラスに付ける必要があります。super()関数を使うこともできません。ただし、多重継承をすることができないため、親クラス群をC3アルゴリズムで直列化することはないので、それほど重要ではありません。

公式サポートされているモジュールが少ない

公式には、os, math, time群だけがサポートされているようです。せめてreを・・・

@propertyデコレータ

プロパティというすばらしい機能を使うことができません。

メタプログラミング

__dict__プロパティにアクセスすることができないため、dir()関数が使えません。もしRPython用のテスティングフレームワークを作るのであれば、古のCppUnitのようにテストメソッドを1つずつ手で登録していくようなコードになる気がします。

関数の引数が、特定のデータ型にバインドされる

通常のPythonでは、変数が型情報を持つことはありません。そのため、C++のテンプレートのように、ジェネリックなアルゴリズムを記述することもできます。しかし、RPythonの変数は型情報を持ち、最初に割り当てられた時にバインディングが生成されます。これには関数の引数も含まれます。

RPythonの印象

IMG_0847

なんだか難しいなぁ、と感じました。

最初に、「これが正規表現をサポートしたら、ちょっとした小さなツール開発で使えるかな、と考えました。そのため、pure Pythonで実装されていて、reと互換性を持つrxpyの移植に挑戦しました。しかし、凄まじく難しくて、うまく完成まで持っていくことができませんでした。上記の落とし穴も、この移植中に見つけたものになります。また、RPythonの最も厳しい点は、ビルド時にリソースを大量に消費するというものです。上記のHello Worldのビルドでも1.5分ぐらいかかりましたし、もしPyPyのような巨大なプロダクトをビルドするときは、メモリは4GB以上ないとダメ、だとか。

また、それほど詳しいドキュメントもありませんし、だれかがRPythonの仕様を保証してくれているわけでもありません。そのため、試行錯誤を繰り返して触っていく必要があります。しかし、将来的には、RPythonのアノテーションの仕組みをもっと詳しく知って、RPythonでのプログラミングを支援してくれる便利なライブラリが増えてきたりすると、もっと開発しやすくなるでしょう。

僕は兎にも角にも、このスピードのすごさを目の当たりにしてしまったため、少しずつでもRPythonを触って、RPythonでできることをどんどん広げていきたいと考えています。

PyPyアドベントカレンダーは、つぎは@yanolabさんの番です。

なお、このエントリーでちょっと言葉が難しいなあ、と感じられた方は、とても評判のよい、エキスパートPythonプログラミングという本をおすすめしております。とうか訳しました。よろしくね!

posted by @shibukawa at 20:55 | Comment(180) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - PyPyよりも5倍高速な最速のPython処理系

The fastest Python Implementation x5 faster than PyPy

IMG_0844

Now I stay San Francisco for business trip. The city become Christmas season and very happy atmosphere. Special ice-skating rink is appeared in the park and the office building that ngmoco:) is in has many illuminations.

I joined PyPy-ja advent calendar . Yesterday @aodag wrote the entry. Today is my turn.

Do you know PyPy? It is a very impressive Python implementation. Its speed become faster and faster. 1.6 was already faster than CPython but 1.7 improved too.

But there is the fastest Python implementation that is faster than PyPy. Following result of the benchmark program that calculates Fibonacci number. Each first lines are the result of the calculation (F31), and second lines are the time to calculate. I uses CPython 2.7.2 and PyPy 1.7 and "it".

スクリーンショット(2011-12-10 19.23.38)

PyPy runs 8.6 times faster than CPython. But "that" implementation runs 5 times faster than PyPy. It is more than 40 times faster than original CPython. Do you believe the result?

That secret of that Python is included in PyPy. Its name is RPython, shorten form of "Restricted Python". Zope has same name Python environment, but it is different one. The code of benchmark is following. This entry uses smipple. Thank you for Ian Lewis! He is super cool Python programmer.

But the interpreter doesn't exist actually.

But you can't use RPython interpreter. RPython is the specification for the subset of Python. All RPython program can run on Python and PyPy. One more thing, PyPy provides the tool translate.py. This is a secret of this blog entry. I will introduce translate.py.

What is RPython?

RPython is created for PyPy. As you heard, PyPy is written in Python. But its super exciting benchmark result isn't achieved on Guido's CPython. PyPy interpreter source code is converted by translate.py into C or LLVM or CLR(.net), Java source code. RPython can gain unbelievable speed instead of any flexibility of lightweight language.

I am interested in the feature that it can translate into native or Java or .net execution like py2exe. So I tried it for PyPy-ja advent calendar.

How to program in RPython?

Following code sample is a sample that familiar with all programers - Hello World.

  • The target function is the special function it makes decision the entry point.
  • __name__ block is not executed. It is useful to keep compatibility with other Python interpreters.
  • The entry point function must return integer.

After typing these command and going to Starbucks and drinking coffee, you get super fast native binary program.

I don't research the detail, but it supports many options to improve the speed, like Just-In-Time compiling and Garbage-Collection. Above result of benchmarking was generated by simple option(just -O2). Above sample uses CPython, but if you use pypy, you can save your time.

Programming in RPython is an eXtreme Programming.

This "eXtreme" is a same meaning of eXtreme Ironing. Almost all Python code can't be accepted as is. I felt as if I programming in C++. There many pit falls. I will show the some of them.

Function in other functions

You can't nested function definition:

Multiple inheritance

RPython can't use multiple inheritance. If you want to share the methods, you must set _mixin_ flag into secondary classes. And you can't use super() function. But it is not important any more (because it doesn't use C3 algorithm to create sequence of parent classes).

Official supported modules are limited.

In official document, only os, math, time modules are supported.

@property decorator

It can't support nicer syntax - property.

Meta-Programming

We can't access to __dict__ property. It means dir() function is not supported. If you want to write testing framework, you must add each test methods by hand like older style CppUnit.

Function's parameters are binded specific data type

Variables in Python don't have type information. So you can write generic algorithm like C++'s template. But in RPython, variables have type information and they are binded when first assignment. It includes parameters of function.

My impression of RPython

IMG_0847

I felt it is difficult.

At first, if it supports regular expression, I will be able to use it for small tool developing. So I tried to port rxpy (pure Python regular expression it has compatibility with re module). But it is super extreme hard task for me (and I couldn't finish). Above pit falls were found when porting rxpy. And the worst point of RPython is it takes much resources. Compiling above simple took about 1.5 minuits. And I heard building PyPy needs more than 4GB memory.

There is only a little instruction. And no one guarantees the specification of RPython. So we have to try and error to use RPython. But if I can understand annotation system better than now and more useful modules they support RPython programming are released, it will be more useful environment.

But I was moved to the performance. So I want to try RPython little by little to expand the capability of RPython. At first I will read the source code of existing programming languages they are implemented in RPython.

Next person who write PyPy-ja advent calendar is @yanolab.

posted by @shibukawa at 20:15 | Comment(173) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - The fastest Python Implementation x5 faster than PyPy

2011年11月18日

ScreenRecyclerで外でも快適デュアルディスプレイ

ScreenRecycler

Mac OS Xには、「古いPCをデュアルディスプレイにする」というコンセプトのScreenRecyclerというソフトがあります。有料ですが。毎回設定の仕方(というか、ScreenRecyclerという名前自体)忘れるので、備忘録がわりにブログで紹介します。

ScreenRecyclerは以前は32ビットモードでしか動かなかったけど、今はどうなんだろう?今のウェブサイトには注意書きがないね。まぁMacは32ビットモードにしても64ビットアプリは動くのであまり困らないですよね。

PCを2台用意

Macが親です。今回はDellのマシンが子供です。VNCはパケットを大量に流すので、ルータ経由などにするとアレゲかもしれないのでLANケーブルでMacとDellを直結しました。まずはネットワークの設定です。まず、MacのLANをローカル設定(固定IP)にします。192.168.1.2にしました。その後に、インターネット共有をかけます。

スクリーンショット(2011-11-18 17.00.57)

スクリーンショット(2011-11-18 17.12.35)

次はDellのマシンを設定しました。DellのマシンはMacとだけつなげます。Macが192.168.1.2なのでこれをゲートウェイにします。自分はこれ以外のIPにします。192.268.1.3にしました。これで完了です。

network

VNCでつなぐ

次に、ScreenRecyclerをインストールして起動します。設定でScan RateとかCompression Rateを上げまくると快適になります。

スクリーンショット(2011-11-18 17.09.54)

次に、WindowsからVNCで繋ぎます。192.168.1.2:6900に接続します。スクリーンショットはTightVNCですが、UltraVNCでも使えています。

vnc

これで快適デュアルディスプレイ生活が手に入ります。みなさんも勉強会にPCを2台持って行きたくなるはずです。MacBook Pro 15とDellのStudio 15の2台を持って熱海の坂を登るのはツライですが!

ultravnc

posted by @shibukawa at 18:21 | Comment(237) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - ScreenRecyclerで外でも快適デュアルディスプレイ

2011年11月09日

ありえるえりあ大規模JavaScript開発の勉強会資料

資料アップロードしました!大規模JavaScriptだけど、エンタープライズではない話ですが、お話をさせて頂きました。こちらが完成版でした。発表時はPCがうまくスリープから復帰してくれなくて、再起動→リカバリしたPPTでプレゼンしたので、2ページ目の大事なこと(後者)が説明できなくて、呪い殺されてしまった人がいないか心配で夜も寝れない日々であります。

ngCore周りで大規模JavaScriptコードを支える仕組みというのは、だいたいこんな感じかな、と思います。

  • ソーシャルゲームは非同期で友達とプレイしあうゲームで、アーキテクチャは普通のウェブアプリケーションとほぼ一緒
  • ファイルをまとめる(ビルド/ベイク)仕組みは重要
  • ファイルアクセス時にビルドするのはコマンド叩かなくていいから良いよ
  • オブジェクト指向サポートがあるとうれしい(classキーワードのある言語を使ったことある人は)
  • ファイル=名前空間の仕組みがあるのでモジュール分割が容易
  • 階層型のシーン管理と、メッセージのディスパッチの仕組みが忍者ロワイヤルのアーキテクチャのポイント
  • 共通ライブラリ
  • 今後はデータ駆動をもっと推進していくよ
  • 国をまたがって同時開発(git, git-flow/Skypeなどを活用)
  • ドキュメントはSphinx(CommonJSドメインも作ったよ!)
  • テストはJasmine

DeNA楽しいよ。つい働き過ぎちゃって遅くならないようにいつも気をつけています。

posted by @shibukawa at 13:54 | Comment(299) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - ありえるえりあ大規模JavaScript開発の勉強会資料

2011年08月02日

書評「Being Geek ―ギークであり続けるためのキャリア戦略」

アート・オブ・コミュニティ ―でお世話になったオライリー・ジャパンの高さんから、Being Geek ―ギークであり続けるためのキャリア戦略の献本をいただきました。ありがとうございます。とても興味深い本でした。何度も転職を続け、エンジニアとしても、マネージャとしても、ネットスケープのようなベンチャーから大手まで、いろいろな仕事を経て活躍をしてきたMichael Loppの体験による深い話が満載でした。この本を読んでみて思ったのは、いろんな切り口から何度も読めるな、というものです。

ギークの立場から〜上司とキャリア戦略をハックする

まずはタイトル通り、ギークの立場で読んでみました。ギークの定義については本書でも語られていますが、本書では、ギークとマネージャの2元論で説明されているため、「現場の仕事をしていて、それを愛している人」と一般化してみることができると思います。ギークの場合には+アルファで対象がコンピュータということもあり、スキルが上がれば定義を理解してルールを元に予測の範囲内で仕事をこなすことができます。他の職種と比べると、「自分の手のひらで世界を作っている」感覚が好きな人が多いという印象があります。木材などの素材に向き合っている伝統工芸の職人などに近いかなと。そのため、人材派遣業の人や、企画書を作って回していくような仕事の方が本書を読む場合にはそのあたりを勘案して読む必要があるでしょう。

そのようなギーク向けに書かれているのは、「システムとしての会社」です。ギークはどうしても出世のための仕事や会議などを軽く見がちですが、上司、キャリアパスなどの背後にある考えやシステム、ルールを見える化することで、どうすれば効率良く良いスコアを稼げるのか、というギークの得意な土俵に持ってこようというアドバイス群です。ギークとしてどんなに高いスキルを持っていても、仕事をしてお金を稼いで日々のドクターペッパー代を稼ぐには、人と接することは必須です。

転職のための面談や上司とのコミュニケーション、プレゼンテーションの仕方など、幅広い項目について、コンパクトにまとまっています。僕も転職をしたり、いろいろプレゼンしたりしていますが、試行錯誤してきた内容のポイントがいろいろ書かれていて、もうちょっと早く出てくれれば・・・と思いました。

マネージャの立場から〜人材採用と人の動かし方

タイトルだけ読むと、ギークの立場を貫き通すための本のように思えますが、ギークと相対するマネージャの立場で読んでも色々参考になることがいろいろと書かれています。中途の採用の面接をしても、会社に来てくれるその日に心変わりしてしまって来るのを辞めてしまった人がいたエピソードなど、こちらもさまざまな体験談を元にしっかりと書かれています。「無能な上司の対処法」などは、逆の立場で見ると「無能な上司と言われないためのアドバイス」ともなるし、最初のXP祭りの牛尾剛さんのプレゼン(アジャイル原理教を滅ぼすために、通し番号のクラス名を強要したりしてダメージを与えようという逆説的な内容)を思い出します。

今の会社の今のチームは、入社して7ヶ月の僕が最古参でも、かなり大きなチームに育っていたりします。このような活発で人材の流入が大きな会社であれば、マネージャという肩書きがなくても本書で書かれた話は訳に立つと思います。また、面接の仕方なども逐一教えてもらえはしないだろうし、この本を読みながらイメージトレーニングすると良さそうです。

沈みゆく船の船員の立場から〜潰れそうな会社でのサバイバル

最後は、幸いにして僕はまだ体験したことのない事象のお話です。前代未聞の前例がないことが起きたりすると、冷静な判断ができなくなってパニックとなります。特に、安定志向の日本の会社は大混乱でしょう。会社が傾いていく様子を生々しく語ってくれる人もなかなかいないのですが(ゼロではないですが)、本書を読んでおくことで、少しでも気分を落ち着けることができます。その結果、その、大変な状況であっても、今後に繋がる冷静な判断を下せるようになるでしょう。潰れそうな会社に止まるメリットなども書かれており、多角的に判断するための視点を与えてくれる本だと思います。

それ以外にハッとしたこと。

最初に説明した通り、この本は原著者の経験に基づくさまざまなエピソードから構成されています。

報奨に金銭を使うのは最後の手段(P133)

これはアート・オブ・コミュニティにも書かれている内容の裏返しです。お金を払わなくても、貢献したいという意志を持って働いてくれる人はいます。「嫌な仕事だけど、お金のために仕方がない」というメンタリティになりがちですが、お金を払わなくても楽しんで貢献したくなってしまう仕事で、さらに「お金までもらえちゃう」というのが最高の職場です。「最後の手段」とまでハッキリ書かれるとキ気持ちいいですね。

会社の昼休みのブリッジ

ネットスケープ社を支えてきていた4人がいつもブリッジをしながら情報交換をしていた、という話は興味を引かれました。また、会社が傾く予兆として、そのブリッジが行われなくなったのが崩壊の始まりを予兆させたというのもおもしろかったです。少し今の忙しい状況がクリアできたら、会社のチームを巻き込んでやってみたいと思います。インフォーマルコミュニケーションをここまで鮮やかなメタファーで説明している本は初めてです。

軽く本書を紹介してきました。現役のギークの人も、マネージャになりたての人も、普段はなかなか体験できない状況にはまり込みそうな人も、多くの人の役に立つ本だと思います。

posted by @shibukawa at 00:54 | Comment(152) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - 書評「Being Geek ―ギークであり続けるためのキャリア戦略」

2011年08月01日

アート・オブ・コミュニティ読書会をしよう!

sphinx_event
※写真はsphinx-users.jpから拝借しました(shibu.jpと同一サーバですが)。

SphinxのユーザコミュニティであるSphinx-Users.jpで、アート・オブ・コミュニティの読書会を行いました。

もちろん、フォーカス・リーディングの寺田さんもおっしゃっていますが、読書というのはただ読んで満足するだけではダメです。行動に結び付けるなり、何かしらのアウトプットに繋がらない読書は、ただ「できた気になる」だけでナンセンスです。

このブログのエントリーでは、Sphinx-Users.jpの勉強会を振り返りつつ、コミュニティ運営に本書の内容を生かすための第一歩の踏み出し方を紹介します。

深く本書を理解し、コミュニティに生かすには?

ただ読むだけではなく、実際に自分達が所属しているコミュニティを取り上げて、具体的に議論しながら進めて行きましょう。もちろん、運営はしていないけど参加だけしているコミュニティや、運営も所属もしていない外部のコミュニティを取り上げ、脳内実験してみながら「もっとここはこうしたい」という提言をまとめていく勉強会もできるとは思いますが、さらに深く理解していくためには、

  • 自分が運営側として参加できるコミュニティを題材にする
  • 実際に、コミュニティの方針、ウェブサイトのコンテンツを操作できるメンバーを揃える

という2項目を揃えて、同じゴールを共有する参加者間で具体的に議論をして深めていく方法がベストだと思います。

この会では、Sphinx-Users.jp自身のミッション・ステートメントを作り上げ、コミュニケーション手段を整理して、ウェブサイトの構成の見直しまで行いました。本書の内容に照らすと、2章の内容が6割で、3〜6章までが4割といった配分です。当日の議事録はこちらです。

ミッション・ステートメント

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posted by @shibukawa at 03:29 | Comment(127) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - アート・オブ・コミュニティ読書会をしよう!

2011年07月08日

数独/ぷよぷよ好きな主婦のためのProject Euler入門

Sudoku
by The Consortium under CC BY-SA

プログラミングというのは、ゲームとかソフトを作るためだけのものではありません。パズルを解くためにも使うことができます。

「コンピュータを使って問題を解くなんて、それってズルじゃないの?」と思われるかもしれません。もちろん、「電卓持ち込み禁止」の試験にパソコンなんて持ち込もうものなら、カンニング扱いで退場させられてしまいます。ですが、世の中には、「パソコンで解く」というルールのパズル集なんかもあります。それがProject Euler(プロジェクト・オイラー)です。このサイトは英語ですが、日本語訳を掲載してくれているサイトもあります。

数学とか算数がよく分からなかったので好きではない、という人もいると思います。ですが、脳トレブーム以前から、数独(ニコリ用語。パズラー用語はナンバープレース(もしくはナンプレ))はブームでした。ぷよぷよや、テトリスなどの落ちものパズルにはまったことがある方も多いでしょう。そのような方々は、プログラミングで楽しめる素養があります。

公式を覚える必要はありません!

1, 2, 3, 4...と並んだ数列があったとします。さて、1000までの数を全部足したらいくつになるでしょうか?

数学を覚えている方は、(1 + 1000) × 1000 ÷ 2という公式を思い出して、答えを導き出すかもしれませんが、パソコンを使う場合は、数式を覚える必要はありません。

それでは道具を用意しましょう。インストールする必要はありません。インターネットを見るブラウザ上でプログラムが書ける、パイソン・ウェブ・コンソールというサイトを開いてみましょう。

開けましたか?それでは、左側の欄に下のようなプログラムを打ち込んで見ましょう。コピーしてもいいですよ?

sum = 0

for i in range(1, 1001):
    ​sum = sum + i
    
print sum

入力できたら、Runと書かれたボタンを押してみてください。右側に数字が出てきましたね?これが答えです。

このプログラムは、「1000までの数を足す」という問題文をそのまま行います。パソコンは繰り返しが得意です。学校のテストでこの問題が出たとしたら、人間がこの戦法でやると、足し算を間違えたり、時間がかかったりして試験の成績は悪くなるでしょう。ですが、パソコンを使う場合にはこれでもいいのです。

sumというのは、足し算結果を入れる箱です。最初は何も足していないので、ゼロを入れておきます。=記号は代入を表します。右の数値を左に入れます。"←"みたいなイメージです。

"for i in range(1, 1001)" というのは決まった書き方です。これを見ると、コンピュータは一段下がった部分のプログラムを1から1001の一つ手前の数値(つまり1000)まで、1000回繰り返します。現在のループ回数は"i"という箱に入ります。最初の繰り返しでは数字の1が、2回目は2が入るというわけです。

繰り返される中では何が行われているのでしょうか?

ここで使っているのは、最初に使った代入の=記号です。sumとiの合計値を、再びsumに代入しています。最初の繰り返しでは、iが1なのでsumは0から1になります。2回目の繰り返しでは、1から3となります。

最後に結果を右側の画面に出します。printという言葉を書くと、結果を右側に出すことができます。何度も書くことができるため、計算結果を確認しながら出すこともできます。試しに、繰り返しの中で、途中結果を出してみましょう。

# Script text here

sum = 0

for i in range(11):
    ​sum = sum + i
    print "i =", i, "sum =", sum

Runボタンを押してみてください。ね?すごいでしょう?

ifという文を使うと、「3で割り切れる数の合計」を求めることができます。%という記号は、割り算の余りを表します。ifの後ろの式が合っている場合に、ifの中に入ります。「if i % 3 == 0」は、「iを3で割った余りがゼロの場合」となります。つまり、3で割り切れる場合にのみ、ifの中の足し算が行われます。これで、3で割り切れる数の合計を求めることができます。

# Script text here

sum = 0

for i in range(1001):
    if i % 3 == 0:
        ​sum = sum + i
        print "i =", i, "sum =", sum
    
print sum

3で割り切れる数を求めて紙にメモしましょう。それから上のプログラムの3を5に書き換えて実行してみましょう。もう一工夫加えると、「3か5で割り切れる数の合計」を求めることができます。これがプロジェクト・オイラーの第一問目です。なんだか解けそうな気がしてきませんか?工夫次第では、難しい問題を解くことができます。数独を解くプログラムの作り方が書かれた本もあります。

数独では、縦横、枠の中に1から9の数字を並べます。同時に1つしか使えないという制約があります。プログラミングでは、if、for、変数(箱)、足し算や割り算などの演算子といった道具を並べて答えを出します。1つしか使えないという制約はありませんが、上記のforの説明のように、書き方のルールがいくつか決まっていたりします。書き方のルールにさえ従えば、自由に道具を並べて答えを出していけば良いのです。

もちろん、少ない計算量で結果を出せる戦法もあります。プロの仕事となると、このような品質が求められることもあります。ゲームをプレイするなら、絵がたくさん表示される方がプレイヤーはうれしいでしょう。短い時間で計算が終われば、そのぶん、たくさん絵を出すことができます。試しに、アマゾンで「アルゴリズムとデータ構造」と検索してみてください。なんだか似たような本がいっぱい出てきますよね?早いプログラムを作るためにはこのような知識も必要となってきます。

プログラムのパズルとしては、「コード・ゴルフ」というものもあります。これは実際のゴルフと同じく、なるべく少ない文字数で結果を出すプログラムを書く競技です。さすがにホールインワンはできないと思いますが、これも頭を使うパズルです。

※勢いだけで書き始めたエントリーです。Ocaml版、Erlang/OTP版、C++テンプレートメタプログラミング版などのエントリーをお待ちしています。

posted by @shibukawa at 05:54 | Comment(92) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - 数独/ぷよぷよ好きな主婦のためのProject Euler入門

2011年07月02日

新婚旅行のクルーズツアーとNintendo 3DS

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最近あんまりブログを書いていなくて、「つまみぐい勉強法でアウトプットしろと言ってたじゃないか!」とお叱りをされる方もいらっしゃるかもしれませんが、昨年からの5冊に引き続き、また他の本の翻訳だったり書き下ろしをしているのでブログの時間がなかなか取れないのです。アウトプットは継続中ですよ!

報告が遅れましたが、新婚旅行はハワイに行ってきました。一番の目的はクルーズ旅行がしたかった、というのがあり飛行機でハワイに行き、7泊は船の上、残り一泊は機内泊というツアーです。地上のホテルに泊まったりとかはなしです。

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船の様子

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posted by @shibukawa at 14:24 | Comment(109) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - 新婚旅行のクルーズツアーとNintendo 3DS

TechLion #2でアート・オブ・コミュニティの紹介をしてきました。

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新宿のNaked Loftで開催されたTech Lion #2アート・オブ・コミュニティの紹介をしました。その後はサイン会もしました。当日お買い上げいただいた皆様、誠にありがとうございます。

スライドはこちらにアップしました。PDFにしてみたらファイルサイズがなぜか200MBを超えてしまってSlideshareにアップできなかったので、SkyDriveのPowerPointアップロード機能を試してみました。

アート・オブ・コミュニティの最初の読者として

この本は、Python業界の裏人事部長と呼ばれる、@voluntas(実は同い年)と一緒に、夜中にチャットしながらオライリーの英語サイトの新刊情報を覗いていて「あ、これおもしろそうだな」と思ったのが翻訳のきっかけです。このあたりはこちらのエントリーにも少し書いています。

この本の翻訳中は常にワクワクしながら読むことができました。長期間に亘る翻訳作業でしたが、最後には「もう終わってしまうのかー、残念」という気分になりました。

本書はそのまま額面通りテクニックを利用しようとすると、いろいろ障害があります。プレゼン資料でも紹介していますが、地元の仲間でちょっと集まって読書会をするようなレベル1の人から、世界をまたがるようなコミュニティを運営するレベル99の人向けまで、さまざまなアドバイスが満載です。自分の身の丈に合わせて読み替える必要はありますし、自分でそのアドバイスの方向性に合うアクションを考える必要も出てくるでしょう。

例えば、一番「これって今は不要な気がする」と言われがちなBuzzの説明のところであっても、イベントの開催の告知、イベント運営の協力者募集やら、発表者募集(CFP)など、多くの人の注目を集めたいということはたまにあります。あそこまで念入りに準備して、ティザーサイトみたいな仕掛けを作らずとも、ベースとなるサイトを作って、URLをTwitterで紹介してRTしてもらったり、ブログに貼るバナーを作って宣伝してもらったり、ということは普通に行います。Buzzというのを明確に意識する必要があるのはレベル50以上ぐらいだと思いますが、そうでない人もそのベクトルの活動は必ず行っています。

「使い方はあなた次第!」というクルマが日本ではあまり売れないのと同様、手段をどんどん考えて活用していける人は多くはないかもしれませんが、複数人でコミュニティを運営する際のベースの知識として読み込んでスタートラインを合わせるのが良いと思います。

ちなみに、この本はコミュニティを運営する側の人たちのための本です。参加したい人には「つまみぐい勉強法」がオススメです。ですが、何かを勉強したり、何かを好きになったら、一緒にその技術を高めたり、広めるための仲間とコミュニティを作ったりということは良くあります。勉強会カレンダーでみかける勉強会の多くはそうやって作られたものだと思います。今後ふとしたきっかけで日本を変えようと立ち上がりたくなったときのために、あらかじめ行動の仕方を学ぶのは良いと思います。

既にコミュニティを運営していて、何か(忙しい人など)がボトルネックになって活動がスムーズに流れていないな、と感じている人は速攻アマゾンでクリック!

組織論としてのアート・オブ・コミュニティ

アート・オブ・コミュニティのもう一つの読み方には、組織論として読む方法があります。アート・オブ・コミュニティで語られる組織は実に魅力的です。みんなで同じ目的を共有し、それに向かって一緒にがんばる。同じ志の人が集まりやすいように土台を作っておく。コミュニケーションがスムーズに流れるようにして、一緒にお祭り騒ぎをしつつ周りを巻き込む。完全実績主義。

マネージャ、グループリーダーなどの肩書きの方は、この本に目を通してみると組織の足りない部分と、どうやってそれを良くしていけばよいのか、というヒントを得ることができるでしょう。

会社も転職が当たり前になり、コミュニティ活動を通じて知り合った人が、「あれ?お久しぶりですね」と会社に転職してきて久しぶりの再会をしたりする昨今です。企業も帰属するという考え方の時代は変わり、企業もコミュニティらしくなってきています。プロジェクトXみたいな状況になった時点で優秀な人(よくオファーを受ける人)からいなくなって組織が骨抜きになるということもありえる話です。21世紀の企業の方法論とコミュニティの方法論が一緒だとしてもおかしくないです。

一番大事なこと

当日の発表では、一番最後の一番重要な部分を紹介することができませんでした。ぜひ、楽しい職場で働いてみたい人はDeNAとかに転職するというのもいいかもしれないですよ?気になる方は yoshiki@shibu.jp までお知らせください。ヒミツは厳守しますよ!

Tech Lionは今後も開催されます

Tech Lionは今後も定期的に開催されるようです。なかなか濃い話がもりだくさんでした。次回は9月と言っていたような気がします。まだ参加されていない方はぜひご参加を。

posted by @shibukawa at 14:18 | Comment(168) | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - TechLion #2でアート・オブ・コミュニティの紹介をしてきました。
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