2012年12月23日

Python温泉に行って本を書いた話

つまみぐい勉強法売れています!

写真は出た直後の写真です。もう2年半も経つのでさすがに平積みはもうしてないですし、他の本と比べてバカ売れで底が見えそう、なのも今はないと思います。はい。

PySpaアドベントカレンダーに混ぜてもらいました。アメリカはまだ23日ですが、(JSTの)24日のエントリーとして参加します。

Python温泉に初めて行ったのは第4回だかなんだかで、当時はもう芳泉閣になっていて、必ず雨に降られるという点も含めてすでに恒例行事な雰囲気でした。Python温泉に参加した後につまみぐい勉強法という本を書いたのですが、この本でもPython温泉で学んだことが含まれています。Python温泉は勉強会のカテゴリのイベントの一つとして見てもなかなか面白いものがあります。このあたりを軽く紹介しようと思います。

勉強会としてのPython温泉

直接参加したわけではないですが、Python温泉の最初のコンセプトは「プログラマーの慰安旅行」とのことでした。当初は主催のVの会社のメンバー中心で、ちょっと他社の人にも声をかけて、山のほうに行ってのんびりする予定だったとかそうじゃなかったとか伝え聞きましたが、プログラミング好きで、会社のプログラミング仕事とは別に趣味でコードも書いていたり、会社の出張命令とかないのに自主的に勉強会なるものに参加するような頭のネジの外れた連中のことなので、二泊三日のふつーの観光なんてできるわけがありません。当然PCを持ち込んで観光地に来て観光もせずにハックするようなイベントに成り果てました。

だいぶ昔に柴田さんが開催されていた、Python Developer Camp Winterとかも、スキー場に来てスキーをせずにプログラムを書く連中ばかりだったので、Pythonプログラマーがこうなるのは必然だったとも言えます。

とは言っても、コンセプトが「慰安旅行」なので、主催者が「がんばらない」のが特徴です。イベントの運営というのは負担が大きく、数百人レベルのイベントともなると数ヶ月、長いもので1年近く前から運営委員会を結成して、コンテンツをつめて開催するのが普通です。イベントの運営の負荷を下げる方法としては、モチベーションの高い人(初参加の運営委員)を一定数入れるようにするとか(タスクの量は減らないですが)、完全に惰性で流れるように何度も開催するか、といった方法があります。もちろん、収益が上がるようにして、苦労があってもきちんと見返りが物理的に得られるようにするのも方法の一つですが、IT業界ではあまりそういう慣例はないですね。

他の人も紹介していますが、Python温泉にはコンテンツというものがありません。イベントのスタート、ご飯の時間、イベントの終わりしかありません。この中で、ご飯の時間は宿の人のコントロール下にあるので、最初と最後しか仕事はないと言えます。イベント開催の数週間前からアナウンスがあったり、お菓子の買い出しがあったりもしますが、イベントの全体の量からすれば相当少ない方だと言えます。

宿泊イベントで大変なのがお金の管理。大学のサークルではなるべく参加費を抑えるようにお金の流れをクリアにして無駄を減らして・・と頭を使っていましたが、Python温泉ではお金も大雑把に1泊1万円。本当は宿泊費はもっと安いのだけど、手ぶらで何も考えずに参加できるように、タオルとかの追加費用もデフォルトで追加されていて、お釣りがでたらどこかの団体に寄付、というシンプルな運用です。

こんな手抜きな(と言うと@aohtaとかに怒られてしまうかもしれないけど)イベントでなぜリピーターが多いかというと、他の人が書いているように、参加者のレベルが高く、いつでもどこでもどんな内容でも、質問すれば答えが返ってくるし、深い議論ができるし、モチベーションが高ければ高いほどリターンが大きいイベントとなっている点です。確かVの人は「リアルなGoogle」という表現を数年前にしていたと思います。ここ重要。試験に出ます。

Python温泉からつまみぐい勉強法にimportされた内容

主催者のVは他の勉強会にはほぼ行きません。自分が聞きたい話があれば人を呼んで話をさせる。自分が主催する勉強会しか行かない。徹底してますね。

つまみぐい勉強法は、カテゴリー的には自己啓発本です。自己啓発本にはパターンがあり、読むと「成功者が持っているノウハウ」を知ったり、や「成功者の成功パターン」を学んで、できる自分になった「気にさせる」のが特徴です。ある種のエンターテイメントで、ハリウッド映画みたいな感じです。何冊か眺めてみるとパターンが見えてきます。自己啓発本そのものに対する批判もいろいろあったりしますが、「世の中の人がこういうメッセージを求めている」のを知れるという意味では大事かな、と思います。みんな自己承認欲求を満たしたいのだな・・と。実際には、読者が「今成功に足りてないノウハウ」と「本の著者が持っているノウハウ」が同じとも限りません。それに著者のnomicoさんと僕自身、「年収10倍」みたいな経歴があったわけではないので、そんな大上段の本は嘘をつかない限りは書けませんでした。

そういう意味では、いっぱい読者を褒めちぎって、「こんなラクな方法でこんなに成功できるよ!」という内容にするのが自己啓発本を書く上では王道なんだと思います。実際、つまみぐい勉強法が出るちょっと前に出た他の本で「勉強会に参加するだけでおk.本を買って読まなくても大丈夫」みたいな本もありました。でも、嘘を書いて読者に気持ち良い気分になってもらって本をたくさん売るのは「ない」と思いました。共著者のnomicoさんや、編集の野口さんとも共通の考えです。あくまでも役に立つ内容でなければならないし、努力はどうしても必要になります。結果として出来上がったのが「努力は必要。常に努力し続けよう。そのために、自分に合った方法で、モチベーションを維持しつづけよう」という過酷な(他と比べて)自己啓発本になりました。

執筆当時はATNDが出始めて、勉強会が開催しやすくなって開催数が飛躍的に増えました。勉強会ブームの到来です。本にするなら「勉強会ブームだぜひゃっはー」と書けばタイムリーだしきっと売れます。ですが勉強会にいっぱい出ている人の中に、成果に結びついてない人が数多くいることを感じていました。どうも仕事が楽しくなさそう。勉強会の参加や運営で忙しいけど、どうやらそれ自身が目的になっているのでは?と。

Python温泉で本の執筆で考えていることについて、いろんな人に聞いたところ@a2cさんから「勉強会に出ても勉強にならない」とはっきりと言われたのを今でも覚えています。その場の多くの人の意見として一致していたのが、やはり自分で努力する場が絶対に必要ということです。勉強会はアンテナを広げるにはいいのですが、自分の仕事に直接リンクしない方向にばかりアンテナを広げても自己満足にしかなりません。勉強会だけではダメだよ、ということが本に追加されました。

Python温泉に参加する人たちは、プログラミングの勉強のための努力を遊びと感じている人ばかりです。つまり努力がそんなに苦じゃないし、何も言われなくても勝手に努力している。むしろ家族との時間をやりくりしながら、努力するための時間を捻出していると。そして本 もたくさん読んでいる。Python温泉のコンテンツの一番の魅力の「人」はこうして作られています。みな、自分で努力してきて学んだことだから、ただ検索して出てくる以上の内容を伴っています。定期的に「慰安旅行」の中で刺激を与え合って、次に会うとき時にはまた新しいネタを持ってくる。

あと、Python温泉の参加者は既婚のおっさん(褒め言葉)が多いんですよね。家族持ちも多い。家族持ちであれば当然自分が使える時間は減ります。特に子供ができると。それでもキラキラしている人が多いし、当時独身だったけど全時間を費やして努力しても追いつけそうな雰囲気がしないし、「無駄な努力をしていない」感を感じました。もちろん、何かのウェブフレームワークを一生懸命勉強しても、それが流行らなかったりメンテが止まったりすれば、100%のリターンは得られません。ですが、他の物に応用できるし、「何がダメだったか」も含めて色々勉強になったりします。そういう意味で「負けない時間の投資法」をしている感じがしました。トランプとかでもそういう人いますよね?大勝を狙わないけど、負けない。結果として強い、みたいな。「流行っているからやる」というのはある意味大勝狙いな努力だと思いますが、Python温泉に参加している人たちは、本当にいろいろやっているけど、結果としてどれも無駄にならない努力の仕方をしているように思います。

この温泉の中で感じたエッセンスはこの本の至る所に散りばめられています。一切嘘や誇張のない本で、「年収10倍」「悠々自適な生活」「一部上場企業の社長」とかと比べると相当地味な本ではありますが、2年半たっても書いた内容が古くなったとは感じていません。まだまだ通用すると思います。nomicoさんも執筆後に自分を活かせる会社転職したとことだったし、僕も転職のオファーが来てDeNAに来て楽しく仕事してます。ホンダを辞めたらいつか一度はシリコンバレーとかに関わってみたいなと漠然と考えてましたが、ちょっと北のサンフランシスコで英語で仕事しているし、年収10倍にはなってないけど1.5〜2倍ぐらいにはなったと思うし、映画も字幕なしで見られた(というかそれしかない)し、本に書いてあることをしていると、いいことあると思いますよ!

本書のターゲットは新入社員とか、数年以内の人だったりしますが、Python温泉のアドベントカレンダーとかに目を通している時点でもう普通の人じゃないし、ある程度業界を楽しんでいる人、つまりは本書を読んで目指す先にすでに来ている人ばかりだと思います。もしこれを読んだ人で、新人の教育に携わることになったり、若い人と一緒に仕事するようなことがあれば、本書の存在を思い出してもらえるとうれしいです。ことしから電子書籍版も買えるようになりましたよ!

次は?

次はみんな大好き@aodagです。PySpa皆勤?で、恒例のお食事係です。どんな素敵な話が飛び出すか楽しみですね!クリスマスだし!

posted by @shibukawa at 15:30 | TrackBack(0) | 日記 はてなブックマーク - Python温泉に行って本を書いた話
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/60976002
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
検索ボックス

Twitter

www.flickr.com
This is a Flickr badge showing public photos and videos from shibukawa.yoshiki. Make your own badge here.
<< 2019年02月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28    
最近の記事
カテゴリ
過去ログ
Powered by さくらのブログ