今週は今の会社(DeNA)で初めての海外出張。木曜日の夜中に帰ってきて、金曜日出社して、今日は今から新婚旅行という謎の神様のいたずら的なスケジュールを楽しんでいるところですが、新婚旅行中に、かれこれ2年近く翻訳し続けてきた「アート・オブ・コミュニティ ―「貢献したい気持ち」を繋げて成果を導くには」がようやくみなさまの元にお届けできるはこびとなりました。
オライリーなのに、ソースコード(ボーナスページとも呼ばれる)がまったくなく、小さな文字がびっしり400ページの、翻訳者(とレビューの方々)泣かせ(しかもイギリス人っぽいジョーク満載で翻訳に苦戦・・・)なところもありますが、自分で翻訳している文章を読んでいても、ずっとワクワクしっぱなしでした。@voluntasの人とチャットしながら一緒にオライリーのUSのサイトを見ていて、目次を見ただけで一目惚れしました。発売日(2009年の8月1日だったと思う)にPDFと紙の本のセットを買い、速攻で読み始めました。当時の会社は「本を出すのは副業にあたり、副業禁止規定に反する」という感じだったのですが、「この本を出せるなら首になってもいいや」と翻訳を始めました。そうこうしているうちに、なんか本の企画がばらばらと入り始めて、いつの間にか4冊出ていましたが、一番最後のメインディッシュとして、一番最初に出したかった本を出せることになりました。翻訳権がゲットできたのは、野良翻訳を初めて半年ぐらいあとの、とちぎRuby会議です。本書の翻訳者を探していたオライリーの高さんと偶然会うことができて、今に至ります。
原著者は、登場してからあっという間にデスクトップ向けのLinuxでトップクラスの人気を占めるようになった、Ubuntu Linuxのコミュニティで活躍しているJono Bacon氏です。人が集まればフィードバックが増え、システムが良くなって、さらに人が集まるというサイクルであるため、人を集めてきちんとした成果を出し続けるということがこのようなコミュニティでは必要になりますが、それをこなしてきた作者だからこその、直球ど真ん中な内容の本です。よくあるビジネス書のような「これだけやればOKだよ」みたいなチャラいことは書いておらず、一つ一つのアドバイスは奇をてらった内容はないのですが、その分、重みのある内容となっています。ビジネス書を流行のマカロンだとすれば、アート・オブ・コミュニティは伝統のずっしり餡のつまったあんパンみたいな感じです。
一人でできることはちっぽけです。何をするにしても、胸を張って人に見せられるような質/量のものを作り上げるには、多くの方のサポートが必要となります。また、自分の少しの力を提供するだけで、他の人がやりたい夢を実現する手伝いもできます。シュリンクしていく日本経済の中で、今までと同じような幸せを維持していくように軟着陸していくためにはどうすればいいのか?というのは良く言われることですが、コミュニティというのは一つのキーワードになるんじゃないかな、と思います。また、会社と個人の関係も大分崩れてきて、コミュニティに活動するような感じで仕事をしている人も増えてきています。21世紀の企業マネジメントとかも内包しているように思います。
本書を出すにあたっては、日本UNIXユーザ会の法林さん、日本XPユーザグループ(XPJUG)の川口さん、前川(てつ)さん、Python/Sphinxのコミュニティ仲間の清水川さん、Ubuntuの日本のローカルコミュニティ(LoCo)の小林さん、吉田 さん、水野さん、やまねさんに、ばっちりと内容の濃いレビューをしていただきました。何度も何度もチェックして丁寧に指摘をしてくれた、オライリー・ジャパンの高さん、ディベロッパーサミットの合間に質問に答えてくれたJono、朝に翻訳作業をしていても、文句を言わずに見守ってくれていた嫁にも助けていただきました。みなさん、どうもありがとうございます。
簡潔でコンパクトで読みやすい日本語となることをこころがけ、また、日本ではまだまだ需要が低いだろうと11章を無料でWebで出して本からカットするなどしたこともあり、(手間の割に)リーズナブルな価格でお届けできました。原著はクリエイティブコモンズなので、無料でダウンロードできますので、こってりなジョークを味わいたい方は原文もどうぞ。日本語はあっさり醤油味な感じです。
本と言えば「IT業界を楽しく生き抜くための「つまみぐい勉強法」 (技評SE選書)」もコンスタントに売れているようです。この本を書くにあたっても、勉強会について触れました。勉強会はコミュニティの入り口です。アート・オブ・コミュニティは運営側の視点の話ですが、参加する側としてはこちらの本もどうぞ。
つまみぐい勉強法では、タイプ別勉強法として明治維新の4人の人物に例えて説明していますが、この4人のピックアップをしてくれたのが、めんたねというミルトン・エリクソンなどを嗜むコミュニティ仲間の浅生楽さんです。そのさん浅生楽が先日出された「桃の侍、金剛のパトリオット (メディアワークス文庫)」では山県有朋が出てくるのですが、僕がお願いしてピックアップしたところから想像が膨らんで、小説のきっかけになったとか。いろんなコミュニティでの刺激が巡り巡って、いろんな成果が出たりして、なんだか最近楽しいです。
have fun!