
土曜日はXPまつり2009でした。スタッフとして参加していました。参加者への配布物がたくさんあったので、「配りやすいように、4種類のチラシとかEM ZEROを1部ずつ束ねて、配りやすいようにしよう」と、セッションが始まった後の時間に数人でワイワイやっていました。今回のXPまつりの気づきとしては、この作業中の@afukuiさんのつぶやき「こういう作業って、最終的にはセル生産になっていくんだよね」というものから1つ得ることができました。
そして昨日、実家の屋上で親と人工芝を並べて、パチパチくっつける作業をしたのですが、この作業中に@fukuiさんのつぶやきを思い出していました。パチパチくっつける作業は以下の3工程に分けておこないました。
- パネルの向きをそろえる
- ジョイント(1辺に8個ぐらいある)の両端だけパチパチ付ける
- 残りのジョイント部を足で踏んづけて固定
最初はパネルの向きを合わせるのと、両端を付ける作業を父親と二人一組でやっていました。だいたい作業時間が一緒だったので。その後、母親が入ってきたら、パネルの向きを合わせる作業1人に対して、パネルの両端をパチパチする作業2人になったり、最終的にはみんなバラバラに作業をしました。@fukuiさんのつぶやきが頭に残っていたので、色々考えていたけど、このような工程の変化は「平準化」の程度によるのかなと思いました。役割分担をするというときには、各人の作業のバランスがとれていないとダメです。各作業も、慣れてくると劇的に作業効率が変わってきます。今回の場合は、向きを揃える作業がそう。段ボールに入っているパネルの向きの法則性が分かったら、ほとんど頭を使わずに向きを揃えられるようになったからです。変化の過程を観察するとこんな感じかな。
- 流れ作業でn人で作業をする
- 1部分の作業効率が改善して、手が空く人が出る
- 手が空いた人はすぐ隣のボトルネックの作業に手を出し始める。ボトルネックが並列化する
- この流れが至るところで起き始め、次第に全員並列のセル生産になる
各工程の平準化が崩れるところがポイントみたい。
果たしてセル生産は進んでいるのか?そうじゃないのか?
セル生産が効率がいいんだ、とか、今後はセル生産が増えていくんだ、という話しが良く聞かれますが、それはちょっと違うかな、と思います。自動車でもセル生産をしているクルマがあります。センチュリー、S2000、NSX。後はパイプフレームを使っているAUDI R8とか、ランボルギーニとかもそうかな。S2000とかNSXは生産中止になってしまいましたが。でも、どれも日産数台から十数台程度かな、と思います(R8とかは良く知らないけど)。通常の製造ライン方式だと、数百台以上1日に流せます。かといって、センチュリーの製造ラインを100個並列で走らせてライン製造と同じ効率が達成できるか?というとおそらくムリ。各部品を100箇所に適切に配備していく流通部分がボトルネックになります。あと、プレス機100台なんて買えないはず。
製造ライン方式とセル生産の使い分けのポイントは、段取替と部品配備、平準化の程度の3要素になると思います。
段取替
自動車がセル生産に向かない最大の理由。同じ場所で作業をするにしても、工程ごとに扱うものが物理的に大きく、工程チェンジのロスが極めて大きいのです。逆に、ケータイ電話組み立てなどであれば、部品が小さく、全行程の部品が手の届くところにあったりします。工程間のタイムロスがかなり小さくできます。
部品配備
これは上のところでも触れましたが、例えば、タイヤメーカーさんがタイヤを運んできたとして、全部のラインに配備して回るのは大変ですよね。これも小さい部品ならでは、という気がします。
平準化
これが今回の気づきの部分。各工程を、同一の作業量に分割できれば、ラインに乗ります。でも、各工程の作業量がバラバラだと・・・そこで、改善しようとしなければ、暇な人は暇なままになるかもしれないけど、やはり、工程間の差をいかに平らにならすのか、というのがポイントになります。以前のエントリーにも書きましたが、ラインの外での準備も含めて、真ん中のラインの平準化というのを考えていく必要があります。
トヨタ生産方式の本当のすごさ
上記の3つの要素を考えてみて、改めてトヨタ生産方式がすごいと思うのは、7つの無駄でも何でもなくて、本当に1台ごとの混流生産を実現しているところ。工程間の段取替えではなくて、生産車種間の段取替もかなり手間がかかります。数千トンの圧力でプレスするプレス機の金型の段取替だって、楽じゃないはず。秒単位で終わらないと思う。十数秒?分単位?もし見られるとしたら、トヨタの製造ラインの一番みたい部分はここです。
この普通は「100台ずつぐらい車種を固めて流そうよ」と思うような部分を変える勇気というか、なんというか、そこをやってしまったところです。一番のボトルネックになると思われる部分をやることで、生産車種数の変動という市場変動に対応ができるようになります。といっても、最近はトヨタも「市場在庫が90日」とか言っていたので、教科書的なトヨタ生産方式はしてないのかもしれないけど。
ソフトウェア開発がトヨタ生産方式から学んでないこと
アジャイルソフトウェア開発で良く問題になるのが契約の部分。本当にトヨタ生産方式を参考にして、それをお題目にしたいのであれば(僕はしたくないけど)、本当は1イテレーションごとに契約書を書かなきゃ行けない気がします。いや、機能ごとかな。プレス機の段取替と一緒で、一番面倒な部分をばらしてやると、真の柔軟性が得られそうな気がします。そうでなければ、請負契約はやめて、派遣で開発者を社内にそろえて、機能開発に対して契約書を書かなくてもいいように(人への契約書は必要ですが)するとか・・・かな。そうすれば、ビジネス側の価値を最大限に発揮できる、柔軟な開発ができると。
でもやっぱり平準化は考えるべき
ソフトウェアがセル生産が最適というのは、各工程間のばらつきや、人ごとの作業量の差を縮める努力まで、まだ手が回っていません、ということを自白している以上の何者でもない気がします。もちろん、僕個人でもできていませんし。でも、はやり平準化の作業は必要だと思う。これからは仕事量が減って・・・という時代。平準化して、仕事を作って、ワークシェアリングでそれをなるべく多くの人に・・・というのが必要になってくるんじゃないかな、と思います。ネガティブな理由かとは思いますが。CI不要とかも場合によってはなってくるんじゃないかな。テストは別の人に、とか。