トヨタ生産方式のかんばんと、ソフトウェアかんばんは別ものですよね。トヨタ生産方式の方は、各工程間の情報のやりとりの手段。全体をみなくても、この「かんばん」という、全体からすると一部分の情報片だけを見ていれば仕事が回るというもの。まぁ、本来のトヨタ生産方式では、本当に「かんばん」のみの情報伝達をしていたように書かれていますが、さすがに21世紀はもっとコンピュータ化されているんじゃないかと思いますけど。ポイントは、ラインの作業者には、一部分しか見ることができないということ。
それに対して、ソフトウェアかんばんというもの(定義があるかは分からないけど、トライコードとかで実装されているもの)は、作業全体が書かれたモノです。朝会などで、チーム全体でかんばんを見て、仕事の割り振りをしたり進捗を見たり。確かに一枚のかんばんは、一つの仕事を表しているので、かんばん方式と類似性があるように見えますが、チーム全体で作業の全体を常に見て把握できる、かんばんの選択にチームメンバーの主体性がある、というところは、まったく異なると思います。
平鍋さんは「自動化率が高くないと(トヨタ生産方式の)かんばんは回らないと言われてましたが、確かにそうだと思います。後は、タクトタイムですね。トヨタは一台のクルマを何十秒で流しているのかは分かりませんけど、一枚のかんばんが次工程に回るのは1分以内。それに対して、ソフトウェアかんばんはタスクごとだと思われるので、1枚あたり、数時間の単位です。それだけ時間がかかるので、「誰がやろうか」という話もできるわけです。
まったく別物であって、どっちが優れている、とかはないかもしれませんが、応用が利きやすいのはソフトウェアかんばんかな、と思います。秒、分の単位のサイクルがあるが、省スペースでこなせる作業はセル生産方式というライバルもいますしね。チョコレート工場みたいなものは完全自動化で人の入る隙間もあまりないと思うし。自動化率が高くても、かんばん方式がトヨタ並に効果がある所はそんなにないかな、というのが実感です。そして、ライン作業にできないような数多くの仕事は、ソフトウェアかんばんの方が役に立ちそうです。
結論としては、かんばんとソフトウェアかんばんは別物ですよ、とそれだけです。